顔を両手でがっつりと固定されてて、動くにも動けません。体温計で計りましょう。これは絶対変です。こんなことで熱があるかどうかはわかりません。

「レイ様。もうそろそろ……」

 これはちょっと恥ずかしいです。リッキー様が膝の上で寝ている状態では力ずくで押しのけることもできません。動けない体の代わりに心がジタバタともがいています。

「もうちょっと」

 もうちょっとって、どのくらいなのでしょう。じわじわと火照ったような熱が額から顔全体に伝わっていくようで、息をするのが苦しいくらい。早くこの状態から逃げ出したいのに、レイ様は一向に離してくれる気配がありません。半ばあきらめかけたところに、

「ゴホン」

 どこからか大きな咳払いが聞こえました。