「それでは、失礼します」

 レイ様の額に手をのせて自分の額の体温と比べます。レイ様の仄かに温かい体温が手のひらに伝わります。自分の体温とレイ様の体温を感じながら感覚を研ぎ澄ませると、しばらく手を当て確かめてみました。けれど熱い感じはしません。

「レイ様と私の体温は変わらないみたいですね。熱はなさそうです。すみません、私の勘違いだったようです」

「もう一度、計ってくれないか。万が一ということもあるし」

 万が一。そうですね。よく考えると手のひらでは熱は正確に計れるものではありませんでした。

「エルザ。体温計をお願いします」

 私は部屋の壁際に立っているエルザに声をかけました。彼女が動こうとするとレイ様の制する声が聞こえて、

「いや、いや。体温計はいらないから、こうやって計れば大丈夫」

 って、レイ様は私の額に自分の額をくっつけました。

「あの……あの……」

 レイ様の体温が額に直に伝わって……。何をいきなり、レイ様の顔が至近距離にどこを見たらいいのでしょう。近すぎて鼻がくっつきそうですし、レイ様の息遣いまで聞こえそうです。
 それにそれに、額をくっつけても熱は計れないと思います。

「んー。もう少し、ジッとしてて」