「ええ。そうだと思います。先ほど一人の手仕事だとおっしゃっていましたが、工房を作るという手もあります。幸い私の領地には腕の良い職人がたくさんおりますし、教育や育成も行っており人員の手配もできます。それに平民の新しい職場としても提供できるかもしれません。もちろんブルーバーグ侯爵家の所有する商会が責任をもって協力します。そこはご安心くださいませ」

 一気にまくし立てた私に圧倒されたのか先生は目を白黒させています。興奮しすぎたかしら?

「悪い話ではなさそうですね。工房を設けるならば大量生産も容易いでしょうから。それではわたしは技術とデザイン提供という形になるのでしょうか? それから、作ったとしても必ずしも売れるとは限りませんので、その際の責任の所在も気になります。あとは、フローラ様にどれくらいの権限がおありになるのでしょうか?」

 先生が危惧なさるのももっともですね。まだ学生ですし、直接商会に携わっているわけではありませんしね。はたから見れば私はただの侯爵令嬢ですから。

「そうですね。父が商会の代表ですので私には決定権はありませんが、紹介することはできます。それと契約するにあたって疑問や不安、不審点などあらゆる問題点を出して頂いて、話し合いを重ねた上で決定します。その時はお一人ではなくどなたか信用できる方や弁護士など契約に詳しい方を同席されてかまいません。こちらとしては後々のトラブル回避のためにも、その方がよいかと思っています」

「……」

 先生は真剣な顔であごに手を置いて黙ったまま。様々なことを考えているのでしょう。