靴を脱いで、ストッキングも脱ぎました。
 よし。
 私はこぶしを握り気合を入れました。枝につかまり足をかけて、踏ん張って……足が滑って、うまくいきません。
 そういえば、木に登ったことはありませんでした。でも、ここで諦めては子猫ちゃんを助けてあげられません。
 何度もやり直しているうちに、要領がわかってやっと子猫ちゃんにたどり着きました。

「子猫ちゃん、おいで」

 手を伸ばすとおそるおそるですが手のひらに乗ってくれました。よかった。子猫ちゃんを落ちないように捕まえて……どうやって降りましょうか。

 片手には子猫ちゃんがいるので、動かせません。かといって片手だけで支えて降りることは、無理です。そんな筋力はありません。
 どうしましょう。登ることは想定してても子猫ちゃんを捕まえて降りることまで考えていませんでした。
 枝を持つ手が震えてきました。いつまで腕がもつのでしょう。子猫ちゃんは安心したのか首のあたりをスリスリして、喉を鳴らしています。

 子猫ちゃんのためにも、ここはもう飛び降りるしかないかもしれません。私は無事ではないかもしれませんが、子猫ちゃんが助かるのなら多少の犠牲には目をつむりましょう。

 よし、せーの。
 意を決して飛び降りる瞬間、

「わああっー」

 誰かの慌てたような絶叫が聞こえたような……