ねじ曲がった根性が露呈した時点で、どうやって婚約をつぶそうかと考えていたところに今回の件。まさしく渡りに船。ラッキーだったわ。たとえテンネル侯爵家の嫡男といえども、クズ男にフローラはもったいないですからね。

「今度こそって、思っている貴族もいるかもしれないね」

 ランディー様は不穏な匂いをちらつかせながらも、穏やかな表情でカップを手に取り、優雅な仕草で紅茶を飲んでいる。
 
「でも、完全にテンネル家が手を引いたわけではなさそうなのよ」

「そうなのかい?」

「フローラからの話ではね」

 ランディー様はわたしの顔をじっと見つめた。

「それも含めて、今から義姉上に会いに行くかい?」

「そんなことできますの?」

 相手は王妃陛下です。スケジュールも詰まっているでしょうし、それでなくても事前に申し込まなければ会えないはずですよね。

「確か今日は公務も少なくて時間が空いているはずだよ。むしろ今日の方が都合がいい。それにディアナが来るとなれば喜んで会ってくれるんじゃないかな」

 ランディー様は王妃様への手紙を認めると従者に託した。
 これからの行動は決まったようです。直接話した方が早いですから。
 わたしは準備を手早く済ませて、ランディー様と一緒に馬車に乗りこんだ。