それって、なんとなく、あまり信用できないような……

 レイ様の普通って、他の人たちにも当てはまるのかしら? 
 婚約者のいるディアナに聞いてみれば分かる? 相談してみようかしら。
 
 そんなレイ様の常識を疑いつつも、抵抗する手段を持ち合わせていない私には、従う以外は術はないのですよね。
 いくら理屈をこねて言ったとしてもレイ様にはかなわない気がします。
 結局、最後は丸め込まれるのがオチですもの。

「しょうがないですね。今回はレイ様の普通におつきあいします」

 ここは早々に降参して白旗をあげる方が得策でしょう。

 私の言葉に一瞬目を見開いて驚いた表情をしたレイ様は、満足したのかすぐに相好を崩しました。
 その一瞬のにこやかなレイ様にまたもやドキッと胸が高鳴りました。

 本当に今日はどうしたのでしょう? 
 久しぶりに会ったからでしょうか?
 
 戸惑う気持ちを隠したくてレイ様の胸に体を寄せました。

 歩くたびに微かに揺れる振動が心地よくて、安心している自分に気づかないまま。

 ましてや、抱き着く私を愛おしそうに見つめるレイ様の眼差しが降り注いでいることなど、気づくはずもありませんでした。