レイ様に手を引かれて連れていかれたのは北の宮。

 手紙が来たあとの二週間後。
 花の開花とレイ様の予定とリッキー様の授業の後でという私のわがままな理由とをすり合わせながら、決まったのが今日でした。

 何か良いことでもあったのかしら? 
 レイ様の端正な横顔に笑みが浮かんでいて、ご機嫌な様子が窺えます。

「んっ? どうしたの。俺の顔に何かついてる?」

 あまりにも見つめすぎたのか、レイ様が私の顔を不思議そうにのぞき込みました。
 レイ様のきれいな菫色の瞳が視界いっぱいに広がります。
 ドキッと心臓が跳ねました。

「あっ。いえ、なんでもありません」

 急に至近距離で見つめるなんて反則です。

 私は慌てて目をそらしました。
 ドキドキと高鳴る鼓動を抑えるように何度か息を吐きだします。

 レイ様の美貌は破壊力がありすぎます。何度もお会いして少しは慣れたかと思っていたのですが、不意打ちには耐性ができていません。

「そう? 顔が赤いけど、熱でもあるんじゃないの? 具合が悪いとか……だったら、無理せずに今日は」

「大丈夫です。熱はありませんし、元気にピンピンしています」

 まさか、レイ様に見惚れてましたって言えませんもの。顔も赤くなっているなんて……