「伯爵令嬢風情ねえ。このことはしっかり覚えておくわ。それと未来だとか、次期だとか言ってますけど、今のあなた達の立場は、ただの侯爵令息と男爵令嬢であって何の権限も力もないのよ。そこは間違えないようにね」

「なによ。だったらあんただって一緒じゃない。あたしたちに偉そうに説教する権利もないわよ。エドガー、もう行きましょ。こんなのに拘ってたら時間の無駄よ。さっ、早く行きましょ」

 リリア様がエドガー様の腕をひっぱります。

「そうだな。侯爵夫人にしてやれなくて悪かったな。フローラ」

 口の端を吊り上げて捨て台詞のような言葉を吐きながら二人は去っていきました。

  
「ディアナ、ごめんなさい」

 二人の姿が見えなくなってから彼女に謝りました。

 いつもそうです。エドガー様にはいつも一方的に怒鳴られたり罵詈雑言を言われても、言い返すことができません。頭の中が真っ白になって言葉が思い浮かばないのです。
 ディアナのように毅然とした態度で立ち向かえたらいいのに。
 弱虫な私だから、エドガー様に嫌われたのかしら。