婚約破棄から始まる恋~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています

 レイ様が待つ部屋へと戻るとすでにお茶の用意が整っていました。

 アンジェラ様に何のもてなしもせずに帰すわけにはいかないからとお願いされてお受けしたのです。

 レイ様だってお忙しいでしょうし、お菓子と紅茶を頂いて小一時間くらいで帰宅する。そんな軽い感じで思っていたのですが、目の前のこれは……アフタヌーンティー形式ですか?

 ケーキスタンドにはサンドイッチから温料理にデザートが品よく盛り付けられています。スコーンにはクロテッドクリームとストロベリージャムが添えてあります。

 私の姿を認めた侍女たちがスープ、アミューズを運んできました。
 本格的すぎませんか? お茶だけでも構いませんでしたのに。

「ローラ、おいで」

 若干、引き気味に様子を眺めているとレイ様の私を呼ぶ明るい声がしました。

「はい」

 この状況ではすぐに帰ることは、無理のようです。

「今日はお招きいただきありがとうございます」

「うん。待ってた」

 カーテシーをして挨拶をすると頬を緩ませたレイ様は短い返事とともに、さっと手を差し出します。レイ様の大きな手に私の手をのせると歩調を合わせるようにゆっくりと歩きだしました。

 椅子に座るとレイ様は向かい側の席に着きました。

 今日は真四角のテーブルで一人分のスペースしかないので、いつものように隣には座れなかったようです。