「くす、くす」

 その様子がおかしかったのか、アンジェラ様から笑いが漏れていました。

「そうね。リチャードもフローラちゃんが好きなのだものね」

「うん」

 リッキー様も嬉しいのか大きく頷きました。
 膝の上にはかわいい子猫。隣にはかわいい天使。目の前には美しい王太子妃殿下。こんな光景を眼福だというのでしょうね。幸せですわ。

 温かな空気に包まれてほわほわとした気分に浸っていると

「ああ、そうだったわ。これからお茶をと思ったのだけれど……このあと公務があるのよ」

 アンジェラ様が思い出したように告げました。
 
「ごめんなさいね」

 すまなさそうな顔で謝るアンジェラ様。

 いつまでもお邪魔している私の方が悪いのだわ。用事が終わったのなら、すぐに退出するのが当たり前なのに。アンジェラ様に気を遣わせるなんて申し訳ないわ。

「いいえ、私も礼儀をわきまえず申し訳ありません」

 私はマロンをリッキー様の膝の上に預けて立ち上がると、礼を取りました。
 
「すぐに失礼を……」

「そうじゃないの。あなたが謝る必要はないし、帰る必要もないわ」

 ちょっと、慌てたようにアンジェラ様が私の言葉を遮りました。

「実はね、わたくしは時間がないけれど、そのかわり西の宮でお茶の用意しているの。レイニーと一緒にお願いできないかしら?」
 
「レイ様とですか?」

 思いもかけない突然の申し出に、私は目を丸くしてアンジェラ様を見つめてしまいました。