自室の机の上の請求書の束をペラペラとめくって金額を確認する。
 その額の大きさには大きなため息しか出ない。
 わたくしはエリザベス・テンネル侯爵夫人。

 先ほど買い物の主であるエドガーと夫婦で話をしてきたところだ。主人は仕事があるからと執務室に戻っていった。

「はあ……どうしてこうなってしまったのかしら」

 わたくしはお気に入りのソファに体をあずけてドッと座り込んだ。
 気持ちを落ち着かせるようにこめかみに指を当てて軽くもむ。

 請求書の内訳のほとんどはリリアの品ばかり。ドレスにアクセサリーから日用品や家具までも買い与えている始末。

 チェント家は男爵の中でも成功している裕福な貴族。お金に困っていることはないはずなのに、なぜだが貧乏だとエドガーもリリアも思っているようだった。

 エドガーの弁では、リリアが涙ながらにチェント家の貧しい現状を訴えるので、かわいそうにと思い買ってあげたのだという。

 こちらも商売をしている身、お金に困窮しているのであれば何らかの情報は入るはずなのに、今のところそれもない。

 あとで発覚することもあり得るので一応調査をお願いするけれど、平民上がりの娘だから、貴族のことはよくわかっていないのかもしれない。