レイ様はショボーンとしおれたようにバルコニーの手すりに手をかけて、桜色の王宮を見つめています。
 会話がなくなってしまって、レイ様の寂しそうな横顔を見ると声をかけることもできません。

 どうしましょう。

 こんな時の対処の仕方がわからなくて心がおろおろするばかりで落ち着きません。何か気の利いたことを言えるといいのに。
 ディアナに教えてもらおうかしら。

 不安な気持ちを抱えながら口を閉ざしていると、そっと手を握られました。
 気づいた時には背中を包むように抱きしめられていました。

「⁉……」

 初めての出来事にすぐには声が出ません。

 背中? えっ……
 お姫様抱っこにエスコートに、今度は背中からって……レイ様、何パターンあるんですか?

 ドギマギとしている間に両手を重ねられて軽く拘束されてしまいました。少し冷たくなった体が、手がレイ様の体温で温められて心地よくなっていくのがわかります。

「レイ様。そろそろお部屋に戻りましょう」

 危険。
 この心地よさは危険だわ。
 心が警鐘を鳴らしている。早く離れなくては……

「そうだね。来年は桜を一緒に見ようね」

「はい」

 はっ?! 

 しまった。