婚約破棄から始まる恋~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています

「わかった」

 よかった。

 今度は引き下がってくれたようです。
 ちょっとあっけないくらいでしたけど。

 こんなに聞き分けの良いレイ様は初めてじゃないかしら?

 レイ様は私の手を取り直して、腰に手を回します。先ほどよりも力がこもっていませんか?

「危ないからね。支えてあげるから、一緒に行こう」

 レイ様のエスコートは優しくて紳士的で上手なのですけれど……やっぱりくっつきすぎではないですか?

「レイ様、もう少し……」

「抱っこしてほしいの?」

「……いえ。歩きます」

 お姫様抱っことエスコート。
 エスコートの方が自分で歩けるだけ、ましよね。

 きっと……たぶん……

 私はなんだか狐につままれたような釈然としない気持ちのまま、レイ様と歩いて行きました。