婚約破棄から始まる恋~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています

 もう、自分で自分が信じられないくらいにレイ様の思うままだわ。
 もしかして手のひらの上で転がされているの?

 大体、レイ様が悪いのよ。だって趣味が私のツボにはまるのだもの。興味を持っても当然でしょう?

「さあ、行こうか? そろそろお腹すかない? 夕食にしよう」

 やっと笑いをおさめてくれたレイ様がそっと手を取りました。

 そういえば、今日の夕食は蛍を見ながら四阿でと言われていたのを思い出しました。はしたないですけれどお腹もすいてきましたわ。

 レイ様は私の腰に手を置き歩き出そうとしました。

「あの……近すぎませんか? 一人で歩けますよ」

 何度となく繰り返す会話です。いつになったらこのセリフはなくなるのでしょう。

「足元が暗いからね。転んだら怪我するよ」

 灯りは最小限度で暗いのはわかりますが、ゆっくりと慎重に歩けば大丈夫だと思うのです。

「それとも、抱っこされたいの? その方が安全だね。そうしよう」

「いえ、いえ、いえ。大丈夫です」

 私は両手を前に出して全力で拒否しました。そんなことは恥ずかしいからやめてください。