「夕焼けがきれい」

 開け放たれた扉の前景が目に飛び込んできます。
 蜃気楼のようにゆらゆらと太陽が揺れて、周りの空は真っ赤に染まり夜を告げる紺色の空が交わる時間帯。オレンジ色の太陽が少しづつ大地に沈んでいきました。

「さあ、行こうか」

 しばらくの間、目の前の景色に見惚れていた私にレイ様が先を促します。

「はい」

 頷くとレイ様は私の手を引いて庭園へと連れて行ってくれました。

 陽も沈みかけて日も暮れつつある外は薄暗くなってきています。そのためか、所々に篝火が灯され視界を補ってくれていました。

 渓流を模した庭園からサラサラと川のせせらぎの音が聞こえます。

 王都で暮らしていると自然に出会えるのはごく稀ですから、たとえ模倣であっても心が落ち着きますね。

 自分の庭園にも取り入れようかしら? 
 渓流は無理でも池だったら作れそうだわ。

「レイ様、池を作るのは難しいのでしょうか?」

「池?」

 私の唐突な質問にびっくり眼で見つめたレイ様の顔が、思いがけなく可愛らしく見えてしまって動けなくなりました。
 私より年上のはずなのに、時折少年のような雰囲気を醸し出すレイ様の姿に気持ちが混乱してしまいます。