「そろそろ、外に出てみようか」

 レイ様の声に窓に目を向けました。外は太陽が沈む頃でしょうか。夕闇が迫っていました。
 隣に座っていたレイ様が立ち上がります。 

 あれから、膝の上から下ろしてもらえたのはお茶が準備が整ってからでした。そのあとは隣同士で紅茶を頂くというこの前と同じシチュエーション。

 レイ様って私の隣に座りたがるのですね。

 テーブル越しの前方のソファはゆったりとくつろげる一人用の物。大の大人が座ってもゆとりがありますから、レイ様にぴったりだと思うのですけれど。
 そう説明しても隣がいいとの一点張りで動こうとはしませんでした。

 どなたか注意してくださらないかと期待してチラチラと見ましたけれど、どなたとも目が合わず。そば付きの方々も無表情でしたものね。
 心の内はわかりませんが、皆さんはどう思っていらっしゃるのでしょう?

 私はエルザに靴を履き替えてもらいながら、そんなことを考えていました。
靴を履き終えて立ち上がるとレイ様が手を差し出しました。

 エスコートをして下さるのかしら? 

 一人で歩けますし必要なこととは思えないのですけれど、断る術はないのでしょう。相手は王子殿下ですものね。

 私はレイ様の手のひらに手をのせました。
 ゆっくりと握られた手にドキリと一つ鼓動が大きく跳ねます。

 大きな手に包まれるようにして廊下を歩き、やがて外へと出ました。