ローレンツも落ち着いたのか紅茶を楽しんでいる。
 今度は彼でも食べられるお菓子を用意しようかしら。塩味系の方が喜んでくれるかもしれないわね。

「シャロン。相談があるんだが」

 カップをソーサーに戻したローレンツが真顔になった。

「なんでしょう?」

「先日、チェスター貿易商会から商談の申し込みが来たんだ」

「チェスターって、チェント男爵家の商会ですわよね?」

 リリアさんの実家。
 
「ああ。そうだ」

「今まで仕事でのつきあいはありましたかしら?」

「ない」

 そうですわよね。なのにどうしたのかしら。

「商談の日は決まりましたの?」

「いや、どうするか迷っているところだ。もともと、取引のないところだから断ってもよいのだが、ちょっと気になってね」

「でしたら、面会してもいいのではないかしら。その席にわたくしも加えてくださいませ」

 商談に乗るも断るも話を聞いてからでも遅くはないでしょう。

 わざわざ、ブルーバーグ家の商会へと面談を申し込むのですもの。度胸があるわね。それにこちらに益があることかもしれませんしね。

 チェント家の事業は代替わりしてご子息が運営していると聞いているわ。
 リリアさんの一件以来、一度会ってみたいと思っていたのよ。