「ああ……」

 言われるがまま、紅茶に口をつけるローレンツ。

 濃紺の髪に琥珀の瞳。

 若い頃は美青年だと評判で令嬢たちの憧れの的だった。
 今でもそのかっこよさは変わらないけれど、年を経た分深みが増していてとても魅力があるように思う。
 出会った頃の彼よりも今の方がずっと素敵だし好きだわ。

 今は落ち葉のごとく枯れていますけども。


「フローラは……」

 やっぱりね。

「今頃は、レイニー王子殿下とお会いしている頃ではないかしら?」

 ずっしりと落ち込んでいるローレンツの肩がピクリと動く。

「どうしても、王子殿下でなければだめなのかね?」

「二度目はないでしょうね」

 わたくしのとどめともいえる言葉に、さらに小さく項垂れてしまったわ。

 三年前に断った時は、わたくしたちの思いをくんでくださったけれど、王家からの婚姻の申し込みを何度も断れるはずはない。