「まあ、ありがとう」

 お茶の時間のいつもの光景。

 ローレンツは甘いものが苦手だから食べずにわたくしに回してくれるのよね。
 苦手だからと言って出すことを拒否することはないので、わたくしが代わりに食べている。
 これは甘いものが大好きなわたくしへの愛情であり心遣いね。
 
 何度か試行錯誤を繰り返し出来上がったケーキ。
 この出来ならお店に出せそうね。

 最近はスィーツとカフェのお店用の商品開発に忙しい。
 シェフやパティシエとの打ち合わせ。お店のレイアウトなどで時間がいくらあっても足りないくらい。

 フローラも学業もあるのにわたくしの片腕になって働いてくれているわ。

 トリッシュ医師との商談も控えているから、ますます忙しくなりそう。
 自分の時間も欲しいでしょうに不満に思うどころか、次々とアイディアを持ってくるんですもの。その努力と精神には脱帽してしまうわ。

 オープンの日が待ち遠しい。
 わたくしもフローラに負けないように頑張らなきゃね。
 
「あなた、いつまで渋い顔をしていらっしゃいますの? せっかくの紅茶が冷めてしまいますわよ」

 わたくしが新たな使命感に燃えているというのに、ローレンツはしおれた草のようになっているわ。