「はあ……」

 隣から大きなため息が聞こえた。
 ローレンツが肩を落として小さくなっているわ。
 
 仕事がひと段落着いた昼下がり。
 リビングに繋がるテラスでわたくしと夫であるローレンツはお茶をしながら休憩をしているところだった。

「あなた、どうしたのですか? 元気がないようですけれど」

 紅茶を手にローレンツに話しかけると「うーん」と気のない返事が返ってくる。
 しょんぼりとしている彼を横目にわたくしはケーキに意識を向けた。何を考えているのかなんとなく想像は出来るので敢えて黙ったまま、放っておいた。

 今日のお菓子は苺のショートケーキ。

 生クリームをたっぷりと使い、スライスした苺の断面が美しい。トッピングには大振りの苺とフランベしたダイス状の苺、いろどりには細かく刻んだピスタチオ。

 見た目も完璧ね。おいしそうだわ。

 出来上がりに満足したわたくしはフォークで一口大に切ったケーキを口に運ぶ。

「んー。美味しい。これなら何個でも食べれそうだわ」

 わたくしの言葉が聞こえていたのか、ローレンツが目の前にそっとケーキを差し出した。