「お靴を履き替えましょうか?」

 靴? 

 予想もつかない答えが返ってきました。

 言われて私は足元を見ました。靴は履いてきたままです。
 そうでした。
 先日、先生が室内履きをもう一足この宮に届けてくれたので、レイ様のお部屋専用になっていたのでした。

「はい。お願いします」

 さすがに靴を書き換えるときまで膝の上ということはないでしょう。

 私はレイ様の腕の中から離れるように動き出しました。もぞもぞと体をひねっているとグイっと後ろに引き寄せられました。

「レイ様、靴を履き替えますので下ろして頂けませんか?」

 エルザとの会話で行動がわかっているはずなのに、膝の上に逆戻りです。

「このままでもできるでしょ? 勝手なことしないの。わかった?」

 レイ様のこの口調は……

「私は小さな子供ではありませんよ。子ども扱いしないでください。それにエルザにだって迷惑がかかります」

「大丈夫だよ。エルザはベテランの侍女だし、靴くらいすぐに履き替えさせてくれるから。ローラはジッとしてて、わかった?」

 またもや子ども扱いです。
 どこでスイッチが切り替わるのでしょう。

 私はムッとしてぷくっと頬を膨らませました。
 抱き込まれた体はさっきよりも強固にがっちりとホールドされています。動けません。