「プライベートだからね」

 レイ様の表情に自信がみなぎります。
 その理屈もどうかと、プライベートだからといって何をしてもいいわけではありませんよね?

「でも、人がいますし、皆さん見ていらっしゃいますし」

「それは仕方がないんだけど、身分上ね。気になるんだったら空気だと思えばいいんだよ」

「空気って、それは無理です。何度言われても無理です」

 私は頭を左右に振りました。
 だって、視線を感じるんですもの。
 生暖かい? 生ぬるい? なんとも言えず面映ゆい空気が漂っていていたたまれない気持ちになるんですもの。

「そっか。なら、寝室に行く? そこならば誰も来ないよ」

「……⁉」

 い、今……えっ……

「うん。し・ん・し・つ。行こうか? 二人っきりになれるよ」

「‼……」

 今度は耳元で囁くようにレイ様の声が。息が、肌を掠めていきました。ぞわりと背中が震え、囁く声が妙に色っぽくて胸がざわざわとさざめきます。

 この感覚は何なのでしょう? 
 この感覚に名前があるのでしょうか。名前があれば少しは納得できるのでしょうか。
 言い知れぬ感情に落ち着きなく焦れる思いが芽生えるものの、どうすることもできません。