「セバス」

 私はすがるような思いで彼に目を向けました。

「はい。フローラ様、なんでしょう」

 セバスは穏やかでいて生暖かいまなざしで恭しく礼を取りました。グレイの髪に黒い瞳、刻まれたしわが長年勤めているであろう侍従長としての落ち着きと貫禄を感じさせます。

「このような行為は王子殿下のふるまいではないと思います。なのでレイ様に注意していただけないでしょうか」

 セバスはレイ様の教育係でもあると教えてもらいました。

 この態勢を改めてもらうには彼に協力してもらった方がいいのかもしれません。
 冷静になるとほんとうに恥ずかしいです。

 みなさん、見てますし。

「フローラ様、申し訳ございません。我が主の勝手なふるまいではございますが、わがままを許して頂けないでしょうか。どうか、お願いします」

 セバスは静かに頭を下げました。

 ええー。

 あの……セバスはレイ様の味方をされるということですか。
 諫めてくれると思ったのですけど。