「謝罪を受け入れてもらっただけでも良しとしなければな」

 父は釈然としない面持ちで自分を納得させるように口にした。

 侯爵殿の胸の内はわからないが、お金ですべて解決するわけではないと思っているのかもしれない。こちらはお金でカタをつけた方が罪悪感もなくなりスッキリするのだが。

「そういえば、フローラ嬢はディアナ伯爵令嬢と仲がいいと聞きましたが」

 友人と食事しているときにそんな話題が出たのを思い出した。

「ああ、そのようだ。実はこっちの方が厄介かもしれんな」

「マクレーン伯爵の機嫌を損なえば首が飛ぶ、と聞いたことがありますが、本当ですかね」

「さあ。わしが知ってる限りでは、今までそのようなことはなかったと思うが。知らないだけかもしれないし、これからないとも限らん。王家の次に権力があると言われているからな」

 真偽のほどは定かでないが、まことしやかに流れている噂。
 よほどの馬鹿でない限り、マクレーン伯爵家を敵に回そうなどという者はいないだろう。