婚約破棄から始まる恋~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています

「ところでブルーバーグ侯爵家へは謝罪に行ったと手紙で読みましたが、どうだったのですか?」

 手紙で事の経緯は知っていても結果は聞いていなかった。

 父は考えこむような渋い顔をして宙をしばらく見つめていた。表情からは明るい結果は読み取れない。

 婚約破棄したのはテンネル家だが、それに関与したのは紛れもなくうちの娘である。大事な婚約を壊してしまったのだ。慰謝料を請求されてもおかしくない。
 今度は腕組みをして考え込んでいる。

 なかなか口を開かない父に

「もしかして慰謝料の額が半端ないとか……」

 無言が怖くてあらぬ想像を口走ってしまった。

「いや、それがなあ。慰謝料か、それで済んだ方が何倍もましだったな」

「どういうことです?」

 意味が分からない。

「わしは土下座して謝罪したあと、慰謝料も払うといったんだが……」

「……」
 
 土下座か、そのくらいはしないと許してはもらえないかもな。それでも生ぬるい方かもしれない。
 何しろ相手は侯爵家だ。
 怒らせたらただではすまないだろう。身分が違いすぎる。