婚約破棄から始まる恋~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています

「婚約を結んだときにエドガーが言っていた」

「それって、本当のことですかね」

 俺が聞いて聞いてきた話とはずいぶん違うな。むしろ反対だったんだが。

「わしは話半分というか、エドガーのほぼ捏造だろうと思って聞いておったよ。あのフローラ嬢をぞんざいに扱っている時点で信用などあるはずもない」

 父も見抜いていたのか。人を見る目があってよかった。

 実は帰る途中でリゾート開発中のテンネル家の領地に寄ってきた。
 それとなく今回の件を領民に振ってみたところ、エドガーの評判は悪く褒める者は誰もいなかった。その反対にフローラ嬢のことはべた褒め状態。みんなが婚約破棄を悲しんでいた。

 学生とはいえ、仕事を放り投げて友人たちと贅沢三昧で遊んでいたらしいからな。その間、フローラ嬢は仕事に勤しんでいたそうだ。領民や従業員からは慕われて女神だと言われていたと。

 雲泥の差だな。

 次期当主のことを良い評判ならともかく、醜聞を赤の他人にペラペラしゃべるのはどうかとは思ったが、みんな相当鬱憤が溜まっていたんだろう。
 父にもあとで酒の肴として話してやろう。激怒するかもしれないが。

 しっかし、こんな嫡男が家を継ぐとなるとテンネル家は大丈夫なのだろうか?

「それはそうと将来はリリアが侯爵夫人となるんですかね?」

 これもまた不安な要素だ。