「リリアお嬢様、よろしいでしょうか?」
 
 扉の向こうから声が聞こえたから、ベッドでゴロゴロと休んでいたあたしは急いでドアを開けた。

「お荷物が届いておりますが、どのように致しましょうか?」

 白髪交じりの初老の男性があたしの姿を認めて頭を下げる。
 目の前に立っているのはこの男爵家の家政を取り仕切っている執事のテッド。

 この人ケチだから、お小遣いもほんの少しだし、買い物をするのにも彼の許可がなければ自由にできないのよね。

 お義父様に愚痴ったら、贅沢はするもんじゃない。テッドの言う通りにしなさいだって、義娘の味方をするどころかテッドの肩を持つんだもん。
 やってられないわ。
 貴族ってサイン一つでなんでも買えると聞いていたけど、全然違ったわ。

 でも、しょうがないかもね。
 うち、貧乏だもん。

「荷物はどこに?」

「玄関ですが、お嬢様あてだと聞いたのでお伺いに来ました」

「わかった。すぐに行くわ」

 あたしはバートとドアの間をすり抜けて階段を下りていく。
 この前、エドガーと買い物した品物が届いたのよね。

 待ち遠しかったわ。