もう過ぎてしまったことをいまさら未練がましく言ってもどうしようもないのですが、ましてやディアナのせいにするなんて。でも、ちょっとだけ拗ねてみたい。

「相手は王子殿下よ。わたしでも断れないことはあるわよ。それに送ってくれるといったから安心して帰ったのよ」

「ディアナはいざとなったら王子殿下より強そうに見えるわ」

 初めてレイ様と会った時のやり取りを見ていれば力関係がわかる気するのだけど。
 邪険に扱われていても堂々としていたしちょっとした嫌味まで侍女たちに投げかけていたのだもの。つきあいの度合いが垣間見えるようだったから。
 ディアナなら何とかしてくれると思ったのよ。

「それはどうかしら? そうね、レイニーたちとは幼馴染で軽口を言い合うくらいには気安い関係だけれど、身分の差はあるのよ。王子殿下と伯爵令嬢、どちらが上だと思って?」

「それは……」

 確かに身分を問われればレイ様の方が上なのは一目瞭然なのはわかりますけど。

 ディアナはローズ様やアンジェラ様とも仲が良いし国王陛下にも可愛がられているのは周知の事実。王宮に部屋まで賜るぐらいですもの。

 彼女の一言で国王陛下ご夫妻を動かせてしまうくらいには発言権はあるんじゃないかしら。と思わせるだけのものを感じるのだけど、これは黙ってた方がいいのよね。