「ふふっ、まあ、そんなことがあったのね」

 ディアナが扇子で口元を隠して笑っています。
 すっかり定番となってしまった学園の庭園で昼食中に先日のレイ様との出来事を話しました。

 私と特別クラスに在籍していて十五人中女子は私たちを含めて五人だけ。
 みんなと仲が良いので一緒にいることも多いのですが、昼食時は婚約者と一緒だったりと他のクラスメートとはバラバラに食べることも多いのです。
 
 四阿でティータイムをしたのですが、なぜか隣に座ってきて並んでお茶をすることになったり、夕食も一緒にすることになったり。
 レイ様はテーブルに着くとすぐさまエルザに夕食の手配を頼んでいたので断る隙もありませんでした。

「あの時、ディアナが私も連れ帰ってくれたらよかったのに……」

「なあに? 何か嫌なことでもあったの?」

「そういうわけでは……」

 食事自体は楽しかったのですけれど、なんというか場違いなような、恐れ多いような、相応しくないような、贅沢なような……いろいろな気持ちがごちゃ混ぜになってうまく言葉にできないのですけれど。

「ディアナが断ってくれてたら、早く帰れたかなあって思って……」

 レイ様がディアナに食事の約束をしていると言ったら、すぐに了承して『あとはよろしくね』ってあっさりと帰ってしまったんだもの。
 一人、ぽつんとおいて行かれたようで寂しかったわ。