「レイ様。お願いです。下ろしてください」

 彼らの態度をみて、自分の姿がみっともない情けないと思ったのだろうか。悲しみに沈んでいるように見えた。
 なんとなく察してはいたけど、俺たちのやり取りを見ていてただ単に面白かっただけだろう。悪気がないのは長年付き合ってきた俺ならわかるけど。

「ごめん。気を悪くさせちゃったか。部下の無作法は主人の責任だからね。俺が代わりに謝るよ。ごめんね」

「あっ、いえ、そんな……レイ様が謝ることでは……」

 軽く頭を下げるのを見たローラが戸惑った様子で俺を見て、それから申し訳なさそうに彼らに視線を移した。
 さすがに笑ったのは悪かったと思ったのか真顔になった彼らは、深く体を折り曲げて謝罪の意を表した。

「私の方こそ、不躾なことを言ってすみません」

 ローラはそんな彼らのに向かって謝るとぺこりと頭を下げた。
 なんというか素直だよなあ。高位貴族にありがちな傲慢さがない。
 だからだろう、彼らの表情が和んで、気まずさが漂った場の緊張感が一瞬にしてほどけてしまった。