「それでしたら、スイーツとカフェのお店の内装をうちの職人で手掛けてもらったらどうですか? 既成のものでなくイメージに合うオリジナルなものを作ってもらったらどうでしょう。うちの製品のアピールにもなりますし」

 消費を拡大していくにはいろいろなアプローチも必要でしょう。
 テンネル家との契約もなくなりましたから、どこかで需要を見つけ出さないと申し訳ないですから。

「それもいいわね。さっそく物件を探さなくっちゃ」

 お母様は俄然やる気が出てきたようです。お互いアイディアを出し合えばよいものができるのではないでしょうか。私もわくわくしてきました。

「二人とも仕事の話はそれぐらいにして、後日計画書を出してほしい。予算のこともあるからね」

「「はい」」

 私はお母様とアイコンタクトを取って返事をしました。

「そして、これが最後だが……」

 お父様が机の引き出しから一通の手紙を取り出すと、それを私の目の前に置きました。

「フローラ宛てに届いたものだよ」

「私にですか?」

 手紙はお父様の執事が管理しています。まずは執事の手に渡り宛名と差出人を記録してそれぞれの元へ届けられるので、よほどでない限りお父様から渡されることはありません。そう、よほどでない限り。

「どなたからでしょう?」

「見たらわかるよ」

 それはそうなんでしょうけれど、できれば事前に教えてくれないかしら?
 私はそろそろと手紙に手を伸ばしました。
 目を凝らしてしっかりと表書きを確認します。宛名は私です。間違いはありません。

 恐る恐る差出人を見ると……

 ローズ・グリセア。

 鮮やかな薔薇の刻印が目に飛び込んできました。
 それは王妃陛下からの招待状でした。