「そこは案ずる必要はないよ。プレゼンをしたという事実はあるが、契約不履行でプレゼンを撤回したという形になっただけだ。だから、商品の権利はこちらにあるんだ。そこもテンネル家と確認している。フローラが関わったものはすべて白紙に戻っている。それが条件だったからね」

 お父様がはっきりと断言してくれたのでホッとしました。
 
「それを聞いて安心しました。それではお母様、どうぞよろしくお願いします」

 すべてが再商品化できたわけではありませんが、無駄にならずにすみそうです。

「あっ、それから。スイーツ店と併設でカフェもオープンしようと思うの。ここでもフローラが開発した商品を取り扱いたいと思っているのよ。よろしくね」

 首をかしげて茶目っ気たっぷりにニッコリと笑うお母様に、私はすぐに言葉が出ませんでした。

「お母様……」

 まだ隠し玉を持っていたのですね。
 私の努力が無駄にならないように考えてくれたのでしょう。

「私も協力するからな。何でも相談にのるからいつでも言ってくるんだぞ」

 お父様の力強い言葉が心に響きます。

「そうよ。家族で頑張りましょうね」

 お母様の励ましの言葉が胸に染み入ります。

 お父様とお母様が私を慈しむような愛情で包んでくれているようです。両親の思いにジーンと胸が熱くなりました。