「まずは婚約破棄の件だが、正式に解消となった。あちらの有責だから、慰謝料を含めて契約通り履行してもらうことになった。テンネル家と締結していた事業も撤退して、こちらが派遣していた人員もすべて引き払うよう手筈を整えている。だからフローラは今後テンネル家と仕事関係で関わりはなくなったから安心していい」

「そうなのですね。わかりました」

 事業と関係がなくなる……肩の荷が下りたような、寂しいような。新しくオープンするリゾート先に何回か足を運んで顔見知りになった人たちもいたので、会えなくなるのはとても残念です。皆さん、ニコニコと笑顔で出迎えてくれて、熱心に話を聞いてくれる良い人たちばかりだったのですけれどもね。
 
「事業が撤退となると、今まで私が開発してきた商品はどうなるのでしょうか? もう必要ないということですか?」

 リゾート地の特産品をいくつか開発していたのですけれど、それも無駄になったということかしら。そうだとしたら悲しいわ。誰の目にも触れることなく幻と消えてしまっては苦労が報われないもの。どこかで役に立てないのかしら。

「いや、実は代案を考えている。シャロン、君から話すといい」

 代案? 商品が無駄にならないアイディアがあるのかしら?