テンネル家は知らなかったかもしれないけれど、わたくしはフローラがエドガーからどんな仕打ちを受けていたか知っていましたからね。いつ婚約破棄をしようかと相談しているところだったのよ。
 結果オーライでこちらが手を出すことなく勝手に自爆してくれて良かった。
 後日、主人にそのことを話したら激怒していたわ。当たり前よね。

 研究の合間に真面目に誠実にテンネル家のために働いていたフローラをぞんざいに扱って虚仮にしたのよ。
 それ相応の報いは受けるべき。これからそれがわかるでしょう。ブルーバーグ侯爵家を見くびらないことね。
 ということで、契約も早々に解消してテンネル家とは縁を切って、うちから派遣している職人たちも撤退させなきゃね。

「さて、今日はどこのケーキ屋さんに寄ろうかしら? お気に入りのお店がいくつもあるから迷うわあ。お店のを買うのもよいけれど……そうよ。どうせなら、自分好みのお店を作るのもいいのではないかしら。自分の好きなものしか置いてないお店。今まで思いつかなかったけど、これってなかなか名案じゃない?」

 馬車の中でわたくしは悦に入り自画自賛しながら家路を急いだのだった。