「エドガーはフローラさんには近づけないわ。だから、どうかスティールのことお願いできないかしら」

 縋りつくように丁重に懇願されても今となっては難しいわ。せっかく帰国してもらっても、無駄になるんじゃないかしら。せめてフローラの気持ちを大事にしてほしかったわね。

「そうねえ。フローラはあんなことがあったから、ショックを受けていてね。結婚のことは考えらないって言ってるの。心の傷が癒えるまでわたくしたちもこのことには触れないようにしているのよ」

 わたくしの言葉にエリザベスの顔が青ざめたのを通り越して、真っ白になってるわ。
 ここまで言っておけば、結婚話も消えるでしょう。
 結婚に消極的なのは事実だし、エドガーとリリアのことはショックを受けるどころか祝福してたけど、これは言わずともいいわね。フローラは優しすぎるのよ。
 
「それと、わたくしは当主ではないから何事も決定権はないのよ。ごめんなさい」

 わたくしは一言謝ると席を立ち、色を失くして力なく項垂れるエリザベスに一礼してカフェを出た。