「おはよ、深鈴」

下駄箱でそう声をかけてきたのは幼馴染の春井蘭奈(かすがい らな)。

見た目は色素の薄いストレートな髪が印象的な美人。

「おはよ」

「うわ、いつにも増してテンション低いなぁ」

「うるさい」

「はいはい」

こんなやり取りも日常の一部。

何も思うことはない。

ただ、鬱陶しさだけがある。

「ねぇ、今日も行くの?」

先程とは違った落ち着きのある声音で聞いてくる。

“今日も”と言うのは、私が毎月、月命日の日に父と母のお墓参りに行っているからだろう。

そして今日はその月命日だ。

「蘭奈には関係ない」

「そーだったね」

そう、関係ないのだ。

私以外誰も…。

「及川、春井、おはよ」

「おー、臼井じゃん。おはー」

「…はよ」

また面倒なのが1人増えた…。

臼井漣(うすい れん)。

私たちと同じクラスで学級委員長。ウザイ、とにかくウザイ。

「連れねぇなぁ」

そんな声にいちいち反応するのも怠いので全無視しとく。