「ーーではどうぞ、ごゆるりとお過ごし下さいませ!」



司会の者がそう言い切ると、待ってましたと言わんばかりに女共が群がる群がる。お目当ては勿論、部屋の奥に座っては偉そうにふんぞり返っている二人の男。


それに群がっては自慢話を語り出す者、甘え擦り寄る者、号泣する者、挙句卒倒する者まで居た。


それもそうだろう、あの群れの中心にいる男達はこの妖の世を統べている、現当主。その番にでもなれば、確約された幸せな未来が待ち受けてるに違いない


故に、あの男達の寵愛を受ける為だけに産まれてきたと豪語する者もいる位だ。


今更驚きはしない……が、


(ーー正直、何が良いのかさっぱり分からないな)


特段顔が良いわけでもない、性格や能力だって現当主に相応しいのかすら、初対面では判断しかねる程に威厳があるわけでも無い。


あるとすれば、〝当主〟という名のステータス位か。


(そこまでして尻尾を振り撒く価値すらない。期待していたわけではないけど、興醒めだ)


そこまで考え、群衆に興味を無くした私はこれから1週間どうやって生き延びようか、暇を潰そうかと思考に耽りながらその場を後にした



ーー四つの目が、私を捉えている事にも気付かずに