「はぁ………今月の稼ぎはこれだけか……」



夜の繁華街。
私は茶色い封筒を握りしめてため息をつく。


3月下旬だけどまだ夜は少し肌寒い。マフラーを巻き直してアパートへと歩き出す。


私、藤原心美(ふじわらここみ)。つい先日、中学を卒業したばかりの中学三年生。


来月から高校生になる。



「これじゃ、家賃だけで給料終わっちゃうよー。ご飯、どうしよう」



夜の繁華街は街中がキラキラとしていてザワザワと騒がしい。


はぁ………最悪。
もうちょっと夜勤、入れれば良かった。



「おー、可愛い姉ちゃんじゃねぇか」


「……え?」



それは本当に突然の出来事だった。


もう少しで繁華街を出る、というところで誰かに声をかけられた。


ここは、いわゆる夜の店が多い場所なので誰かに声をかけられてもおかしくはないのだが、不良のたまり場にもなっているのでバイトが終わったら直行で家に帰っている。