零といるとすごく落ち着く。心が温かくなる。家で嫌なことがあっても、零といる時だけは全部忘れられる。この時間がずっと続けばいいのになんて、最近はよく考えるようになった。でも自習室に来てもう２時間が経とうとしている。そろそろ帰らないと。ふと隣を見ると、零も帰る準備をしているところだった。二人で席を立って、自習室を出ようとしたその時だった。

　ガシャン！

　教材やら筆箱やら荷物を大量に持っていた若い女性の先生が盛大に荷物をばらまいてしまった。私はそれを見てすっかり固まった。息が苦しい。やまない喧噪が私を包んでいく。立っていられない。
　呼吸が速い。　
　深呼吸しなきゃ。
　鼓動が聞こえる。
　どうしよう。
　だめだ。
　動けない。
　助けて。　
　誰か。
　お願い。
　もう無理。
　いや。
　だめ。
　死んじゃう。
　助けて。
　お願い。

　私はそこで意識を失った。