「・・・さき!みさき!」
 「あ、ごめん!なに?」
 「珍しくぼーっとしてんな。何かあったか?」
 「ごめんごめん、何でもない!」
 「早く行くぞ!」
 危ない。零に悟られるところだった。零は周りをよく見ていて勘がいい。それはこの前の体育祭の練習期間中に感じたことだ。零は何かしらのリーダーをしていたわけではないけど、顔色が悪い子にすぐ声をかけていたり、クラスがまとまらないときも明るく盛り上げてくれて、優勝できたのは零がいてくれたからだと私は思っていた。
 その期間は何かと零と一緒に準備することが多くて、いつの間にか仲良くなっていた。最初はお互いくん付け、さん付けだったけど、体育祭が近づくにつれて呼び捨てで呼ぶようになった。
 普段から私はクラスのみんなとよく話すけど、ここ最近は零と話すことが一気に増えている。前は放課後に一人で自習室に通っていたけど、今は零と二人だ。お互い部活に入ってないから、毎日自習室で2時間程度勉強してから帰っている。