先輩を知る度に、少しずつあたしの心に焦りが生じる。

半年前まで付き合っていた彼女を学校で見るたびに、こんなにスタイルが良くて顔もかわいい人と付き合っていたのかとか、何で2ヶ月でこんなかわいい人をフッたんだろうとか。

先輩の人気ぶりとか…
先輩を好きな女の子はあたしだけじゃない。
その中で1番になれる自信なんて端からないし、ていうか先輩が誰も選ばないパターンだってあるかもしれない。

こうやって女は深い恋の迷宮に入って行くんだろう。

先輩はやっぱり人気者で、文化祭の劇で主役をしていた。

先輩は自分がいかにカッコ良くて、みんなから恋の目で見られているか分かっていない。
だからいつも無防備だった。

この間も誰かが先輩に告ったらしい。けれど答えはノーだった。
良かったという安堵と、あたしもそうなるかもしれないという不安。

その隣り合わせはあたしを何度も恐怖させた。

12月、あたしはもう自分の感情を抑えられない所まで持って来ていた。

会えばたまらなく、先輩を欲しがってしまう。
耐えがたい欲求だった。

決していやらしい意味ではなくて、好きすぎる人の心を自分だけのものにしたいという独占欲…
それがあたしの心を支配していく。