朝ご飯の後に寝てしまい、次に目を覚ました時は、進藤先生にご飯を食べなさいって起こされた。
昨日、仕事していた時まではちゃんと時間を守って起きられたのに…
『ようやく起きたね…』
重たい瞼を開く。
『少ししたら、熱を測ろうか。』
お休みだというのに、私の専属の医師になっている進藤先生。
『水分も摂るんだよ。』
用意されてお昼ご飯のお盆に、経口補水液の入ったペットボトルを置かれる。
『寝ることも大事だけど、食べることも同じくらい大事。
最近減ってきてた食欲を、この入院で取り戻さないとね。』
そう言いながら私の頭を撫でる進藤先生は、なぜだか朝から嬉しそう。
「なんでそんなに笑顔なんですか?」
『そりゃそうでしょ。
ここ長いこと、かなちゃんをこんなふうに独り占めできなかったからねぇ』
進藤先生まで恐ろしいことをさらっと言う。
アメリカではジャクソン先生、日本では、先日の石川先生といい…私は孝治さんの妻なのに。
『はい、そろそろ体温測ろうねぇ』
ウキウキの進藤先生が手に持った体温計を受け取り、脇に挟む。
その間に食事の準備を進められる。
こんなにたくさん乗ってて、何時間かかっても完食できる気がしない。
『僕もここで頂きます。』
と温められたコンビニのお弁当。
「…唐揚げ弁当ですか?」
かなりのこってりなおかずが並ぶ。
『うん、たまにはこういうのもいいかと思って、コンビニで買ってきた。』
「普段は買わないんですか?」
一人暮らしの進藤先生。コンビニや外食も多いはず。
『もうこの年だから、コンビニよりも手作りしたご飯の方が、体に優しいんだよ。
でも、たまには若い頃を思い出してね。』
そう言って、コンビニ弁当の蓋を開けると、ガツガツ食べ始めた。
私はというと、目の前の薬を一粒ずつクリアしていくのに必死。
薬を飲み終えるだけで、お腹が満たされていく。
『早く薬飲んで、ご飯食べなよ〜』
「はい…」
そんなこと言われても…。
体温計が鳴ったけど、結局体温がいくつだったのか、進藤先生が体温計を私の脇から外したので
分からないまま。
『かなちゃんは幸治くんの食事をしっかりと作ってるよね。』
「はい。アメリカに行くまでの体調の良かった時は…」
今はお母さんがよく来ては家のことをしてくれているので、とても楽をしている。
「進藤先生は、どんなご飯を作るのですか?」
『僕?僕は日本料理はもちろん、たまには中華料理にフランス料理、イタリア料理と大したものはできないけど、自分が美味しいと思えるものはてきとうに作ってるよ。
まぁ、1人分ってかなり難しいけどね。』
ハハと笑いながら何ともない顔で言う。
「私はそこまで色々な料理は作れません。
幸治さんと暮らし始めて、それからお母さんから色々な料理を教わったけど、なかなかレパートリーが増えなくて。」
『なら、今度僕が教えてあげるよ。』
そんな会話をしながら、私は少しずつ食事を進めた。



