未知の世界7


『おはようございます。佐藤かな先生ですか?』



「はい。」




「私は良子の母です。このたびは大変娘がお世話になりました。」




良子ちゃんのお母さん?



看護学校のお金を出してくれたという。



確か良子ちゃんは、家に居場所がないとかなんとか言っていたので、てっきりヤンチャな感じのお母さんだと思っていた。




とてもそんな風には見えなくて、苦労して彼女を育ててきたのか、顔は疲れて服装はあまり派手ではない恰好をしていた。




そしてその隣にいた女性も私に頭を下げた。




『初めまして。森良子の通う看護学校で教員をしています野村と申します。




この度は彼女の相談に乗っていただき、ありがとうございました。




全て彼女から聞いています。』




「そうですか。あの、今日は野村先生もお母さまもおそろいで・・・」




『彼女の話を聞いて、すぐにでも診察をしてほしく、また病状から入院を覚悟でここに参った次第です。』




そうだったんだ。それで一人でなく三人で。




「良子ちゃん、覚悟はできてるのかな?」




『はい、野村先生に話して、学校はどうなるかわからないけど、これからのことは後で考えて、今は病院へ行くことを決めました。それで、母にも相談するように言われて・・・




昨夜電話をしたら、飛んできてくれて。』





『本当に以前ここで入院しているときも、この病院では大変お世話になりました。




良子は反抗期で、起きている時間に来ると、恐ろしく怒っていましたので、あまり興奮させまいと、夜に来ていたのです。




また家庭もあの当時バタバタしていたのと、昼間に仕事をしていましたので、先生にご挨拶もできませんでした。』




そう話すお母さん。




「いえ、私はその・・・」




『かな先生は、あの時、医者でもあって、患者さんでもあったんだよね?』




と良子ちゃんが舌を出しながら話す。




は、恥ずかしい・・・・たぶんその辺のことも聞いているだろうけど・・・




「今日は一番に診察できるようにと、佐藤先生も石川先生もスタンバイしてるのよ。



良子ちゃん、本当によく覚悟してきてくれたね。ありがとう。」



私は涙が出そうなくらいうれしかったけど、そこは三人を不安にさせまいと、こらえた。