はっ!
と気配を感じて目を開けると…
『よく眠っていたね。』
高い鼻が私の鼻に付くのではないかというくらい近くで、ジャクソン先生。
「……はい。
……ゲホッ」
とジャクソン先生の顔をよけながら咳が出る。
『結構長く眠っていたけど、夜に眠れなくなるよ。』
そう言われて部屋の時計をみると、
「…えっ!?」
もう夕方…。
目をやった時計は、日本から孝治さんが持って来てくれたもの。
そう、私が初めて孝治さんに会って、入院した時に私の病室に持ってきてくれた置き時計。
実はあれから、入院するたびに持ってきてくれる。
今回、手術となり、アメリカまでわざわざ持ってきてくれた。
あの時計だけは何も変わってない。
『ん?』
同じようにジャクソン先生は時計に目をやりながら、私の頬に手をやり、リンパを確認する。
寝起きの私がぼーっとしている間に、すかさず聴診器を胸元に当てる。
長い長い聴診……
目の前にあるジャクソン先生の顔の後ろの天井を見ていると、再び睡魔に襲われそうになる。
『かなっ!かなっ!』
声をかけられ目を覚ます。
眠い…
『今日は消灯まで、ここで仕事しようかな。』
と呟くジャクソン先生。それはいつか日本で入院していた時に、お父さんがやっていた…
「いえ、ちゃんと起きていられますから!」
そんな言葉を聞いたら、しっかり目が覚めた。
『次に来た時に寝ていたら、消灯までここで仕事するからね。』
「は、はい…。」
それだけは勘弁して欲しい。
心を許したジャクソン先生だけど、ずっと見られているのはきついことを、日本で経験済みだから。
そんなやりとりをして、ジャクソン先生は部屋を後にした。



