『どうだ?調子は…』
いろんな感情を抑えて、孝治はかなに声をかけた。
「……目眩が少しずつ治ってきました。」
アイマスクを外さないで答えるかな。
『そんなに辛かったか?MRI…』
溜め息と共に、尋ねる。
「はい…少し目を開けてしまったら、怖いくらいに目が回り始めて…
それを見てしまったせいか…目を瞑っても目眩が止まらなくて。
ずっと我慢してた吐き気が我慢できなくなって…
はぁ
とにかく、ごめんなさい。」
アイマスクから少し目を出して謝る、かな。
MRIの最中に嘔吐してしまい、検査が中断し機械に吐物を撒き散らしてしまったことを思い出し、後悔した。
『脳神経科の先生には、俺から謝っておいた。
メニエールにはよくあることだそうだ。』
「メニエール?」
『分かるか?メニエール症候群だ。』
「激しい貧血でなくて?」
『そう。
激しい目眩、激しい嘔吐、動きが取れなくなる。
検査の結果、メニエールだと判明した。
これから薬を飲み続ければ、また起きることはそうないそうだ。』
「飲み続ければ…」
そう言ったまま黙ったかな。
それが一番難しいと、自覚していた。
「今まで以上に、飲まなかったは、許せないぞ。」
そう孝治に言われ、なぜいまこの病院で横たわたるに至っているのか…
しっかり思い出していた。
今日一日、自分の薬の管理が招いたことを思い出していた。
『一週間、メニエールの症状を観察して、治療するのに必要だそうだ。
一週間入院したら、帰宅して、数日過ごして何もなければ、また仕事ができるから。
とにかく今はゆっくり休むことだな。』
数時間前からケンカというか、怒られていたことが嘘のように、優しい孝治さん。
かなの頭を撫でて、部屋を後にした。
「はぁ…また新しい病気か…」
かなは涙が出そうになり、アイマスクを下ろした。