そう呟いた私を、蒼一さんは眉を下げて苦笑した。
「相変わらず優しすぎるんだから」
「そ、そんなんじゃ」
「とにかく、しばらくはこれでいく。先のことはその時考えよう」
私にスマホを返してくれる。それを見つめながら、私を守ってくれているんだから蒼一さんに従おうと頷く。時間を置いて、いつか分かり合える日がくるといいんだけどな。
「新田さんの対処も考えるから」
「え、新田さんもですか!?」
「当然でしょ、やり方が常識を逸脱してる。仕事面でも責任は取ってもらわないと」
ううん、なんだか大ごとになってしまっている。私は腕を組んで唸った。新田さん、確かに良くないことをしたけど、なあ、
……同じ人を好きになったという点は、私は憎めないところもあるんだけど。お人好しなのかな。
蒼一さんは積まれた段ボールを見渡しながら話題を変えるようにして言った。
「さて。引っ越しも無事済んだことだし、狭いけど新生活だね。咲良ちゃん、今更だけど約束しよう」
「約束ですか?」
「一番大事なこと。
嘘をつかず、言いたいことはちゃんと言う。まずはこれだ」
柔らかく笑って蒼一さんがそう言った。私も釣られて頬が緩む。
今まではお互い様子見しながらの生活だった。でもそんな遠慮はいらない、今後はちゃんと夫婦として暮らしていこう。蒼一さんはそう言ってくれてるんだ。
彼はさらに続ける。
「きっと咲良ちゃんから見て苛立つ時もあるだろうし、不満だって絶対出てくる」
「ええ、そんなこと」
「それが普通なんだよ。暮らしてきた環境も違うんだ、全部の価値観が合うわけがない。
大事なのはそれをどこまでお互い歩み寄るか、だよ。一人が我慢するのは一番だめだ」
真剣な彼の表情に、私は頷いた。そうだ、彼の言うことは尤もなこと。私だって蒼一さんから見たら至らないことなんてたくさんある。それを二人で少しずつ歩いていくんだ。
「はい、わかりました」
「うん。頑張ろうね」
蒼一さんは笑いながら早速段ボールを漁り出す。私も荷解きを始めようとした時、言おうと思っていたことを思い出し、伝えたくて声を出した。
「蒼一さん」
「ん?」
「あの話なんですけど……
挙式だけ、もう一回してもいいですか?」
段ボールから手を離し、蒼一さんが振り返った。少し驚いた顔をしている。
多分今までの私だったら遠慮していらないです、と言っていたと思う。実際話を聞いた直後は二回目の結婚式なんて、と思っていた。
でもやっぱりやろうと思う。それは、これからはちゃんと二人で夫婦として歩んでいこうという決意の表明というか、ケジメのようなものとして。
蒼一さんがふにゃりと嬉しそうに笑った。そして大きく頷く。
「相変わらず優しすぎるんだから」
「そ、そんなんじゃ」
「とにかく、しばらくはこれでいく。先のことはその時考えよう」
私にスマホを返してくれる。それを見つめながら、私を守ってくれているんだから蒼一さんに従おうと頷く。時間を置いて、いつか分かり合える日がくるといいんだけどな。
「新田さんの対処も考えるから」
「え、新田さんもですか!?」
「当然でしょ、やり方が常識を逸脱してる。仕事面でも責任は取ってもらわないと」
ううん、なんだか大ごとになってしまっている。私は腕を組んで唸った。新田さん、確かに良くないことをしたけど、なあ、
……同じ人を好きになったという点は、私は憎めないところもあるんだけど。お人好しなのかな。
蒼一さんは積まれた段ボールを見渡しながら話題を変えるようにして言った。
「さて。引っ越しも無事済んだことだし、狭いけど新生活だね。咲良ちゃん、今更だけど約束しよう」
「約束ですか?」
「一番大事なこと。
嘘をつかず、言いたいことはちゃんと言う。まずはこれだ」
柔らかく笑って蒼一さんがそう言った。私も釣られて頬が緩む。
今まではお互い様子見しながらの生活だった。でもそんな遠慮はいらない、今後はちゃんと夫婦として暮らしていこう。蒼一さんはそう言ってくれてるんだ。
彼はさらに続ける。
「きっと咲良ちゃんから見て苛立つ時もあるだろうし、不満だって絶対出てくる」
「ええ、そんなこと」
「それが普通なんだよ。暮らしてきた環境も違うんだ、全部の価値観が合うわけがない。
大事なのはそれをどこまでお互い歩み寄るか、だよ。一人が我慢するのは一番だめだ」
真剣な彼の表情に、私は頷いた。そうだ、彼の言うことは尤もなこと。私だって蒼一さんから見たら至らないことなんてたくさんある。それを二人で少しずつ歩いていくんだ。
「はい、わかりました」
「うん。頑張ろうね」
蒼一さんは笑いながら早速段ボールを漁り出す。私も荷解きを始めようとした時、言おうと思っていたことを思い出し、伝えたくて声を出した。
「蒼一さん」
「ん?」
「あの話なんですけど……
挙式だけ、もう一回してもいいですか?」
段ボールから手を離し、蒼一さんが振り返った。少し驚いた顔をしている。
多分今までの私だったら遠慮していらないです、と言っていたと思う。実際話を聞いた直後は二回目の結婚式なんて、と思っていた。
でもやっぱりやろうと思う。それは、これからはちゃんと二人で夫婦として歩んでいこうという決意の表明というか、ケジメのようなものとして。
蒼一さんがふにゃりと嬉しそうに笑った。そして大きく頷く。



