「んな顔すんなって」
流石に無理矢理はしねぇよ。
それでも身体は正直というか、身を引いた水原に何処となく寂しさを覚えて、触れたい気持ちが顔を出す。
色々と綯い交ぜになった感情が溢れ出し、ついくしゃりと頭を撫でれば、ころころと表情が変わる水原が可愛くて。
だからこそさっき邪魔をしたスマートフォンを恨みがましく手に取れば、映し出された液晶の文字に、肺の中の空気が全て出たんじゃないかというくらいの大きなため息を吐いてしまった。
『帰りにケーキよろしく』
……こんなもんのせいで、俺は。
「瀬尾?」
水原とキスできなかったのかぁ……。
悲しいやらなにやらで水原にくっつけば、またメッセージがきたことを知らせる音が鳴る。
差出人は三つ全てが佑香で、わざとか?わざとなのか!?と疑うのも仕方がないだろ。
「見なくていいの?」
「……見るよ」
見る見る、見ますよ。見るけどさ。
すでにいつもと変わらない水原に、なんだか俺だけがショックを受けてるみたいで少し、……少し。
……悲しいとか、そんなんじゃねぇし。



