「はは、なんだそれ」
力が抜ける。
嬉しいって。幸せって。
なんだそれ。
そんなん俺もだっつーの。
「俺もすげぇ幸せ」
多分今かなり緩んだ顔してる。
可愛い
愛しい
好きだ
愛してる
ふわふわと今にも飛んでいきそうな言葉が腹の底から湧いてくる。
水原から目が離せない。
──キスしてぇ。
どうしようもない欲の衝動に駆られるがまま水原に近づけば、逃げるどころかむしろこちらを捉えるかのように手を握られて、心臓がうるさいくらいに暴れ回る。
もう何も考えられない、あと少しでキスしそう。
そんなときだった。
"ピロンっ"
……は?
間の抜けたような音に、浮かれていた頭が瞬時に現実に引き戻される。
でも俺は健全な男子高校生なので、そのくらいじゃ止まらないし止まれない。
……止まれないけれど。
"ピロンっ"
二度目の邪魔のせいで目を潤ませながらアワアワとする水原を見て、思わず力が抜けてしまった。



