「私も好き」
俺よりもずっと低い位置で落とされた言葉。
それは消えることなく俺の耳へとしっかり伝わって。
「ちょ、苦しい!」
「あ、わりぃ」
気づいた時には、力いっぱい水原を抱きしめてしまっていた。
「別にいいけど」
慌てて離れれば、特に怒るそぶりもなく、それどころか柔らかく笑う水原に少しだけほっとして。
「潰されるかと思った」
笑顔のままそう言った水原に、一気に情けなさが降りかかってきた。
「まじですまん」
……余裕なさすぎだろ、俺。
あーー、かっこ悪りぃ。
あまりの恥ずかしさに思わず顔面を覆うと、さらに笑う声が聞こえてきて。
「……笑いすぎだろ」
一体何がそんなに面白いのか。
いや確かに浮かれまくりの俺は側から見れば面白いのかもしれないけども。
ちらりと水原を見れば、きゅっと細められた目と視線がぶつかる。
「なんだかすごく嬉しいから」
一瞬伏せられた瞳が、すぐにまたこちらを向く。
「私、すごい幸せ」
真っ直ぐなその言葉が、俺の心臓を痛いくらいに締め付けた。



