「えーっと、水原さん、だっけ?」
「あ、はい」
なんでまた水原に話しかけてんだよ。
いい加減早く帰ってくんねぇかな……。
不満たらたらの鬱陶しそうな目で佑香を見れば、それに気付いたみたいで。
一瞬、ほんの一瞬だけ。
ちらりとこっちを見た佑香が、にやっと笑ったような気がして。
「こんな不出来な弟で申し訳ないけど、よろしくね」
…………は?
はぁあぁああぁあ!?!??
な、な、なんつーこと言ってくれてんだこの姉は!!
「…………えっ?」
ほら、横で水原も困惑してるし!!
まだ付き合ってもねぇのに、部外者が勝手によろしくしてんじゃねぇよ!!!
「おい! 余計なこと言うなよ!」
まじで早く帰ってくれ!!
そう願いを込めて佑香を睨みつけるけど、特に気にもしないのか平然とした顔で俺から奪ったチョコレートを眺めている。
「今日の貸しはこれでチャラにしといてあげる」
そう言ってチョコレートをぷらぷらさせながら帰っていく後ろ姿に、そういや一応出かける約束してたことを思い出した。



